ユング心理学(分析心理学)は個人の意識、無意識の分析をする点ではフロイトの精神分析学と共通しているが、個人的な無意識にとどまらず、個人を超え人類に共通しているとされる集合的無意識(普遍的無意識)を視野に入れた分析も含まれる。ユング心理学による心理療法では能動的想像法(active imagination)が行われる場合もある。能動的想像法は文字通り意識的に無意識のイメージを掘り下げる手法であり、無意識が活性化する場合があるため、経験を積んだセラピストの元で行われない限り、危険な手法である。また、ユング心理学は、他派よりも心理臨床において夢分析を重視している。夢は集合的無意識としての「元型イメージが日常的に表出している現象」でもあり、また個人的無意識の発露でもあるとされる。夢の分析はフロイトが既に重視していたことであった。しかしユング心理学の夢解釈がフロイトの精神分析と異なる点は、無意識を一方的に杓子定規で解釈するのではなく、クライアントとセラピストが対等な立場で夢について話し合い、その多義的な意味・目的を考えることによって、クライアントの心の中で巻き起こっていることを治癒的に生かそうとする点にある。ユングはフロイトとの決別以後、自らの無意識から湧き出る元型的イメージと真摯に対峙しながらも患者への治療を続けた。これら元型的イメージは統合失調症の患者のイメージにおいても同様なパターンが見られるため、ユングは統合失調症患者であり、オカルティストであるという誤解を受けることもある。しかしその時期においても、ユングが医師として患者への治療を行い、多くの患者を癒やし、現実に導いていたことはユング心理学の理解の上で重要なことである。ユングは人間の心の成長過程を「個性化の過程」と呼び、健常者、統合失調患者を含めた全ての人間が経験するものとした。従ってセラピー(心理療法)が終了しても、人間の個性化の過程は継続する。ユング派のセラピーでは、セラピー終了後もクライアントをサポートするためにカウンセリングを継続する場合もあり、この場合のセラピーを、「個性化」と呼ぶ場合がある。ただし、これは他の心理療法と同様、クライエントの「生き方」に介入したり指示を与えたりするものではないし、いたずらにセラピーを長引かせるためのものでもない。